九州各地で今、メンタルヘルス対策に取り組むべき理由

近年、職場における従業員のメンタルヘルス対策は、企業規模を問わずすべての経営者・人事労務担当者にとって避けられない経営課題となっています。2028年4月からは50人未満の事業場にもストレスチェックの実施が義務化されるだけでなく、2026年10月からはカスタマーハラスメント対策や、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策も新たに義務化されるなど、メンタルヘルス対策への取り組みの強化が厚生労働省から相次いで発表されています。本記事では、九州各県(福岡・熊本・鹿児島・宮崎・大分・長崎・佐賀)の産業構造を踏まえながら、メンタルヘルス不調が企業に与える影響、ストレスチェック制度の最新動向、そして地域で活用できる公的なメンタルヘルス対策の相談窓口について、分かりやすく解説します。
本記事で分かること
- メンタルヘルス不調が企業経営に与える経済的損失の実態
- 2028年4月から義務化されるストレスチェック制度の最新動向
- 福岡・熊本・鹿児島・宮崎・大分・長崎・佐賀、九州7県それぞれの産業構造の特徴
- 各県で活用できる公的なメンタルヘルス・ハラスメント相談窓口
- 日本産業カウンセラー協会九州支部が提供するメンタルヘルス対策支援サービスの概要
目次
- 1. メンタルヘルス不調が企業に与える経済的損失
- 2. ストレスチェック義務化の最新動向|50人未満も対象に
- 3. 福岡の産業構造と活用できる相談窓口
- 4. 熊本の産業構造と活用できる相談窓口
- 5. 鹿児島の産業構造と活用できる相談窓口
- 6. 宮崎の産業構造と活用できる相談窓口
- 7. 大分の産業構造と活用できる相談窓口
- 8. 長崎の産業構造と活用できる相談窓口
- 9. 佐賀の産業構造と活用できる相談窓口
- 10. (一社)日本産業カウンセラー協会九州支部のサービス紹介
- 11. よくある質問(Q&A)
- 12. 関連資料のダウンロード
- 13. まとめ
1. メンタルヘルス不調が企業に与える経済的損失

「メンタルヘルス対策は福利厚生の一環」という認識は、もはや古いものになりつつあります。横浜市立大学と産業医科大学の共同研究によると、出勤はしているものの心身の不調により本来のパフォーマンスを発揮できない「プレゼンティーズム」と、不調による欠勤「アブセンティーズム」を合わせた経済的損失は、日本全体で年間約7.6兆円にのぼると推計されています。これは日本のGDPの約1.1%に相当し、65歳未満の精神疾患の医療費(約1.1兆円)の7倍以上という規模です。
特に注目すべきは、損失の大部分(約7.3兆円)が欠勤ではなく「出勤しながら不調を抱える」プレゼンティーズムによるものという点です。離職や休職といった分かりやすい損失だけでなく、目に見えにくい生産性の低下が企業経営に静かに影響を及ぼしているのです。
厚生労働省の「令和6年労働安全衛生調査」でも、メンタルヘルス不調により1か月以上休業または退職した労働者がいた事業所の割合は12.8%に達しており、特に1,000人以上の大規模事業所では9割を超える事業所で該当者が発生しています。さらに深刻なのは、何らかのメンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所の割合が63.2%にとどまり、約4割の企業がいまだ対策に着手できていないという現実です。対策を講じていない企業は、安全配慮義務違反と経済的損失のリスクを抱え続けていることになります。
| 指標 | 数値 |
|---|---|
| メンタル不調による経済的損失(全国・年間) | 約7.6兆円(GDPの約1.1%) |
| うちプレゼンティーズムによる損失 | 約7.3兆円 |
| うちアブセンティーズムによる損失 | 約0.3兆円 |
| メンタルヘルス不調で休業・退職者が出た事業所の割合 | 12.8% |
こうした損失を未然に防ぐには、不調者が出てから対応する「事後対応型」ではなく、ストレスチェックや相談窓口の整備による「予防型」のメンタルヘルス対策へ転換することが、経営上の合理的な選択といえます。
2. ストレスチェック義務化の最新動向|50人未満も対象に

労働者の心理的負担(ストレス)への予防的措置として、2015年12月より労働安全衛生法に基づくストレスチェック制度が施行されました。労働安全衛生法第66条の10により、常時50人以上の労働者を使用する事業場には年1回の実施が義務化されています。
しかし、厚生労働省の調査では、50人以上の事業場の実施率が81.7%であるのに対し、50人未満の事業場では34.6%にとどまるなど、企業規模によるメンタルヘルス対策の格差が大きな課題となっていました。
この格差解消のため、厚生労働省はこれまで努力義務とされてきた50人未満の事業場へのストレスチェック実施を、2028年4月から義務化する方針を明示しています。義務化から1年以内(2029年3月31日まで)に最初のストレスチェックを完了する必要があり、小規模事業場の経営者や人事担当者にとっても、義務化前からの体制整備が将来の法的・経営リスク回避の鍵となります。
| 区分 | これまで | 2028年4月以降 |
|---|---|---|
| 常時50人以上の事業場 | 実施義務(年1回) | 実施義務(変更なし) |
| 常時50人未満の事業場 | 努力義務 | 実施義務化 |
また、令和6年労働安全衛生調査では、メンタルヘルス対策に取り組んでいる事業所は63.2%で、その内容として「ストレスチェックの実施」が65.3%と最多でした。一方、50人以上の事業所では9割超が対応しているのに対し、10〜29人規模では55.3%にとどまるなど、規模間の差は依然として残っています。国は第14次労働災害防止計画(2023〜2028年)において「メンタルヘルス対策に取り組む事業場を80%以上」「50人未満の小規模事業場のストレスチェック実施率を50%以上」とする目標を掲げており、今後さらに環境整備が進む見通しです。
ストレスチェック制度は、検査の実施そのもの以上に「結果通知後の事後措置」と「集団分析を活用した職場環境改善」が、法的責任の観点でも経営効果の観点でも重要な鍵を握ります。特に50人未満の事業場では、人事担当者がストレスチェック事務を兼任するケースが多く、人事権を持つ者の関与禁止など、実施方法上のコンプライアンス維持に課題が生じやすい傾向があります。義務化を見据え、外部の専門機関を活用した体制整備が、今まさに求められています。
3. 福岡の産業構造と活用できる相談窓口

福岡の産業構造の特徴を踏まえながら、県内で活用できる公的な相談窓口をご紹介します。
福岡県の産業構造の特徴
福岡県は九州の人口の約半分が集中する九州の経済的中心地であり、産業構造が多様です。福岡市・北九州市の二大都市圏を中心に、卸売・小売業、サービス業、情報通信業(IT・コールセンター産業)が集積する一方、北九州市を中心とした鉄鋼・自動車関連の製造業も根強く存在します。近年は半導体関連企業の集積も進み、「シリコンアイランド九州」の一翼を担っています。
業種別の特徴を踏まえると、メンタルヘルスリスクの現れ方も業種ごとに異なります。厚生労働省の労災統計では、精神障害の労災請求が多い業種として「医療、福祉」「製造業」「卸売業、小売業」が挙げられており、これは福岡県の主要産業構成とも重なります。サービス業が集中する都市部では顧客対応によるストレス(カスタマーハラスメント)、製造業が集積する北九州エリアでは過重労働や職場内のハラスメントが、それぞれ課題として現れやすい傾向にあります。
2026年10月からはカスタマーハラスメント対策や、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策も義務化されますので、今のうちから体制の整備を図ることをお勧めいたします。
福岡県で活用できる公的相談窓口
| 窓口名 | 主な相談内容 | 連絡先 |
|---|---|---|
| 福岡産業保健総合支援センター | メンタルヘルス対策支援、ストレスチェック制度の相談、研修会 | TEL:092-414-5264(福岡市博多区) |
| 福岡労働局 総合労働相談コーナー | パワハラ・セクハラ等のハラスメント相談、労働条件全般 | TEL:092-411-4764(雇用環境均等部指導課) |
| 福岡県労働者支援事務所 | 労働相談・あっせん(県内4か所に設置) | 福岡県庁ホームページより最寄りの事務所を確認 |
| 福岡県精神保健福祉センター | 心の健康に関する相談 | 福岡県ホームページより確認 |
福岡産業保健総合支援センターは、独立行政法人労働者健康安全機構が運営する公的機関で、メンタルヘルス対策支援や治療と仕事の両立支援、ストレスチェック制度に関する相談を無料で受け付けています。来所・電話・メールでの相談に加え、職場巡視等の実地相談や、人事労務担当者向けの研修も実施しています。
また、労働者数50人未満の小規模事業場については、各地域の「地域産業保健センター」が、健康診断後の医師の意見聴取やメンタルヘルス相談、長時間労働者への面接指導などを無料で提供しています。福岡県内には複数の地域産業保健センターが設置されており、ストレスチェック義務化を控える小規模事業者にとって、いまから関係を築いておきたい窓口です。
ハラスメントに関する相談は、福岡労働局の総合労働相談コーナーが窓口となります。パワーハラスメントは総合労働相談コーナー、セクシュアルハラスメント・マタニティハラスメントは雇用環境均等部指導課が対応しており、面談・電話どちらでも相談可能です。外国人労働者からの多言語相談にも対応しています。
4. 熊本の産業構造と活用できる相談窓口

熊本県の産業構造の特徴
熊本の産業構造の特徴を踏まえながら、県内で活用できる公的な相談窓口をご紹介します。
熊本県は近年、TSMC(台湾積体電路製造)の進出を契機に、産業構造が大きく変化しています。九州フィナンシャルグループの試算では、TSMC進出などによる熊本県内への経済波及効果は10年間で11兆2,000億円規模にのぼるとされ、半導体関連企業の進出・投資は90社以上、新規雇用は1万人を超える見通しです。
一方で、急速な企業進出・人口流入は、地域社会や労働環境に新たな課題も生んでいます。菊陽町・大津町など県北エリアでは人口増加や地価上昇が続き、住宅事情の変化や新規転入者の増加によるコミュニティの変容、半導体関連企業特有の交代制勤務やグローバル人材との協働など、従来の熊本にはなかった労務管理上の論点が生じています。また、半導体関連産業に人材が集中する一方で、従来からの地場産業(農業、サービス業、建設業など)における人材確保競争の激化も指摘されています。
このような急激な産業構造の変化期にこそ、従業員の心理的負荷を可視化し、早期にケアする体制づくりが重要になります。
熊本県で活用できる公的相談窓口
| 窓口名 | 主な相談内容 | 連絡先 |
|---|---|---|
| 熊本産業保健総合支援センター | メンタルヘルス対策支援、ストレスチェック制度相談、研修会 | TEL:096-353-5480(熊本市中央区) |
| 熊本労働局 総合労働相談コーナー | ハラスメント相談、労働条件全般の相談 | 熊本労働局ホームページより確認 |
| 熊本県地域産業保健センター | 50人未満の事業場向け健康相談・メンタルヘルス相談 | 最寄りのセンターは熊本産業保健総合支援センターへ確認 |
| 熊本県精神保健福祉センター | 心の健康に関する相談 | 熊本県ホームページより確認 |
熊本産業保健総合支援センターは熊本市中央区花畑町に所在し、平日9時から17時まで相談を受け付けています。メンタルヘルス対策支援だけでなく、治療と仕事の両立支援にも対応しており、半導体関連産業で増加傾向にある中途採用者・外国人技術者を含む多様な人材のメンタルヘルス管理についても相談が可能です。
ハラスメント対策については、熊本労働局の総合労働相談コーナーが一元的な窓口です。急速な事業拡大に伴い組織体制が変化する企業では、管理職と従業員のコミュニケーション不全からハラスメントのリスクが高まりやすいため、早期の相談・研修活用が推奨されます。
5. 鹿児島の産業構造と活用できる相談窓口

鹿児島県の産業構造の特徴
鹿児島の産業構造の特徴を踏まえながら、県内で活用できる公的な相談窓口をご紹介します。
鹿児島県は、全国でも有数の農業・畜産県です。県内総生産(約5兆7,729億円)の産業別構成をみると、第3次産業が74.6%を占めるものの、農業は鹿児島県経済を支える基幹産業として位置づけられており、令和5年の農業産出額は全国第2位です。特に畜産は農業産出額の約7割を占め、肉用牛(黒毛和種)・豚・ブロイラーの飼養頭数(羽数)はいずれも全国1位という、畜産県としての顔を持っています。
また、鹿児島は南北600kmにわたる広大な海域を持つ離島県でもあり、水産業(クロマグロ養殖、うなぎ養殖、かつお節生産など)も盛んです。観光業も主要産業の一つで、桜島や屋久島、奄美大島といった豊かな自然を背景に、宿泊業・サービス業が地域経済を支えています。
農業・畜産・水産・観光といった第1次産業・サービス業中心の産業構造は、都市型の製造業やオフィスワークとは異なるメンタルヘルス課題を抱えています。例えば、季節や天候による業務量の変動、家族経営や個人事業主が多い業態特性から、相談先や産業医へのアクセスが限られがちな小規模事業場が多いことが特徴です。また、離島が多いという地理的特性上、専門的な相談機関への来所が困難な労働者も少なくありません。
鹿児島県で活用できる公的相談窓口
| 窓口名 | 主な相談内容 | 連絡先 |
|---|---|---|
| 鹿児島産業保健総合支援センター | メンタルヘルス対策支援、ストレスチェック制度相談、研修会 | TEL:099-252-8002(鹿児島市上之園町) |
| 鹿児島労働局 総合労働相談コーナー | ハラスメント相談、労働条件全般の相談 | 鹿児島労働局ホームページより確認 |
| 姶良・伊佐地域産業保健センターなど地域産業保健センター | 50人未満の事業場向け健康相談・メンタルヘルス相談 | 例:姶良地区医師会内 TEL:0995-42-9913 |
| 鹿児島県精神保健福祉センター | 心の健康に関する相談 | 鹿児島県ホームページより確認 |
鹿児島産業保健総合支援センターは鹿児島市上之園町(鹿児島中央駅近隣)に所在し、電話・メール・来所での相談を受け付けています。離島部の事業場についても、オンラインや電話を活用した相談対応が可能な場合があるため、まずは電話で相談内容を伝えることをおすすめします。
50人未満の小規模事業場(個人経営の農業・観光業を含む)が多い鹿児島県では、地域産業保健センターの活用が特に重要です。例えば姶良・伊佐地域産業保健センターでは、医師または保健師によるメンタルヘルス相談、長時間労働者への面接指導、職場訪問による産業保健指導などを無料で提供しており、労働者個人からの申し込みも可能です。2028年のストレスチェック義務化に向け、小規模事業場が多い鹿児島県では早期の準備が特に重要になります。
6. 宮崎の産業構造と活用できる相談窓口

宮崎県の産業構造の特徴
宮崎の産業構造の特徴を踏まえながら、県内で活用できる公的な相談窓口をご紹介します。
宮崎県は、温暖な気候を活かした農業・畜産業、そしてそれに関連する食品加工業が経済の中核を担っています。経済産業省の経済構造実態調査(製造業)によると、宮崎県の製造品出荷額等で最も大きな割合を占めるのは「食料」(22.7%)で、次いで「飲料」(10.8%)、「電子」(10.3%)となっており、食品関連産業が突出した存在感を持つことが分かります。
畜産業では、肉用牛・豚・ブロイラーなどの飼養が盛んで、農畜産物の生産から加工・流通までを担う事業者が県内に広く分布しています。また、シーガイアをはじめとする観光・リゾート産業も宮崎県の重要な産業です。
食品加工業や農畜産業は、製造ラインでの早朝・深夜勤務、季節による繁閑差、人手不足が常態化しやすい業種特性があります。こうした業種では、人員配置の融通が利かないことによる長時間労働や、限られた人員での多能工化によるプレッシャーが、メンタルヘルス不調の要因となりやすい点に留意が必要です。
宮崎県で活用できる公的相談窓口
| 窓口名 | 主な相談内容 | 連絡先 |
|---|---|---|
| 宮崎産業保健総合支援センター | メンタルヘルス対策支援、ストレスチェック制度相談、研修会 | TEL:0985-62-2511(宮崎市祇園) |
| 宮崎労働局 総合労働相談コーナー | ハラスメント相談、労働条件全般の相談 | 宮崎労働局ホームページより確認 |
| 宮崎県中部地域産業保健センターなど地域産業保健センター | 50人未満の事業場向け健康相談・メンタルヘルス相談 | 宮崎産業保健総合支援センターホームページより確認 |
| 宮崎県精神保健福祉センター | 心の健康に関する相談 | TEL:0985-29-2556(宮崎県総合保健センター内) |
宮崎産業保健総合支援センターは宮崎市祇園に所在し、平日に電話・メール・来所での相談を受け付けています。食品加工・農畜産業特有の交代制勤務や季節労働者を多く抱える事業場のメンタルヘルス対策についても、専門スタッフへの相談が可能です。
宮崎県精神保健福祉センターは、労働者個人としての心の健康相談にも対応しています。職場の相談窓口だけでなく、個人としてのメンタルヘルスケアの入り口としても活用できます。
7. 大分の産業構造と活用できる相談窓口

大分県の産業構造の特徴
大分の産業構造の特徴を踏まえながら、県内で活用できる公的な相談窓口をご紹介します。
大分県は、九州の中でも重化学工業が盛んな県として知られています。経済産業省の経済構造実態調査(製造業)によると、大分県の製造品出荷額等で最大の割合を占めるのは「非鉄」(18.4%)、次いで「鉄鋼」(16.4%)、「石油」(12.5%)となっており、大分臨海工業地帯を中心に重厚長大型の産業が集積していることが分かります。
大分市・大分臨海部には大規模な製鉄所や石油化学コンビナートが立地し、関連する協力会社・下請企業も多数存在します。重化学工業は交代制勤務やプラント運転による緊張感の高い業務が特徴であり、安全管理と並んでメンタルヘルス管理の重要性が高い業種といえます。厚生労働省の労災統計でも、過重労働による脳・心臓疾患の労災請求が多い業種として「運輸業、郵便業」と並び製造業全般が挙げられており、大分県の主要産業はこうした傾向と関連性が高いと考えられます。
また、温泉観光地として知られる別府市・由布市を中心とした観光・サービス業も県内経済の重要な柱です。
大分県で活用できる公的相談窓口
| 窓口名 | 主な相談内容 | 連絡先 |
|---|---|---|
| 大分産業保健総合支援センター | メンタルヘルス対策支援、ストレスチェック制度相談、研修会 | TEL:097-573-8070(大分市荷揚町) |
| 大分労働局 総合労働相談コーナー | ハラスメント相談、労働条件全般の相談 | 大分労働局ホームページより確認 |
| 大分県内の地域産業保健センター | 50人未満の事業場向け健康相談・メンタルヘルス相談 | 大分産業保健総合支援センターホームページより確認 |
| 大分県精神保健福祉センター | 心の健康に関する相談 | 大分県ホームページより確認 |
大分産業保健総合支援センターは大分市荷揚町に所在し、平日8時30分から17時15分まで相談を受け付けています。同センターでは「こころの健康づくり計画の作成」や「ストレスを緩和するセルフケアとラインケアの方法」など、メンタルヘルスに特化したセミナーも定期開催しており、重化学工業など交代制勤務が多い職場のラインケア(管理職による部下のケア)強化に役立てることができます。
大分県は地域産業保健センターを通じて50人未満の小規模事業場への支援も行っており、協力会社・下請企業など中小規模の事業場が多い大分県の産業構造において、重要な役割を果たしています。
8. 長崎の産業構造と活用できる相談窓口

長崎県の産業構造の特徴
長崎の産業構造の特徴を踏まえながら、県内で活用できる公的な相談窓口をご紹介します。
長崎県は、三菱重工業長崎造船所に代表される造船業を中心とした重工業の歴史を持つ一方、近年は半導体関連産業への構造転換が進んでいます。長崎県諫早市にはソニーセミコンダクタマニュファクチャリングの大規模工場(Fab5)があり、世界トップシェアを持つCMOSイメージセンサーを生産、正社員・派遣社員を含め6,000人規模の雇用を支えています。また、京セラも長崎県諫早市に新工場の立地を決定しており、半導体関連の企業誘致が県の成長戦略の柱となっています。
九州における半導体(IC)生産額は1兆3,126億円にのぼり、長崎県は熊本県に次いで半導体による経済効果が大きい県とされています。県は「長崎半導体成長戦略」を策定し、5年後に半導体関連分野で1兆円規模の生産を目指す方針を示しています。
造船業(重工業)と半導体産業(先端製造業)という、性質の異なる2つの産業が併存する長崎県では、それぞれ異なるメンタルヘルス課題への対応が求められます。造船業では大型プロジェクトの工期に伴う繁閑差や下請構造に起因するストレス、半導体産業ではクリーンルームでの精密作業や24時間体制の生産ラインによる勤務形態の特殊性が、それぞれ留意すべきポイントです。
長崎県で活用できる公的相談窓口
| 窓口名 | 主な相談内容 | 連絡先 |
|---|---|---|
| 長崎産業保健総合支援センター | メンタルヘルス対策支援、ストレスチェック制度相談、研修会 | TEL:095-865-7797(長崎市平野町) |
| 長崎労働局 総合労働相談コーナー | ハラスメント相談、労働条件全般の相談 | 長崎労働局ホームページより確認 |
| 佐世保地域産業保健センターなど地域産業保健センター | 50人未満の事業場向け健康相談・メンタルヘルス相談 | 例:佐世保地域産業保健センター TEL:070-2199-1818 |
| 長崎県精神保健福祉センター | 心の健康に関する相談 | 長崎県ホームページより確認 |
長崎産業保健総合支援センターは長崎市平野町に所在し、長崎会場・佐世保会場の両方でメンタルヘルス関連の研修・セミナーを定期開催しています。「メンタルヘルス支援に活かすブリーフセラピーの視点」「ストレス対処法としてのセルフトーク」など実践的なテーマのセミナーが充実しており、人事労務担当者・管理職のスキルアップにも活用できます。
佐世保市など造船関連企業が集積するエリアでは、佐世保地域産業保健センターが小規模事業場(労働者50人未満)向けの健康相談・メンタルヘルス相談を無料で提供しています。下請企業など人事専任者を置きにくい中小事業者にとって、重要な相談先となっています。
9. 佐賀の産業構造と活用できる相談窓口

佐賀県の産業構造の特徴
佐賀の産業構造の特徴を踏まえながら、県内で活用できる公的な相談窓口をご紹介します。
佐賀県の産業構造は、食料品・電子部品・輸送用機械が出荷額の中心を占める、バランスの取れた製造業県です。鳥栖市は交通の要衝として輸送用機械(自動車部品)関連企業が集積し、トヨタ紡織九州をはじめとする自動車サプライチェーンが地域経済を支えています。
また、半導体関連産業も佐賀県経済の重要な柱です。県内には半導体用フォトレジストで世界シェア約3割を持つ企業の国内製造拠点があり、シリコンウエハの出荷額が全国1位という品目も存在します。九州における半導体関連の設備投資波及効果は佐賀県にも及んでおり、地場の精密機械・電子部品関連企業への発注増加も見込まれています。
加えて、佐賀県は医薬品関連企業(経皮吸収型製剤など)の集積も特徴で、貼付薬の製造分野では世界市場をリードする企業の拠点が置かれています。国勢調査によると、佐賀県の就業者構成では「製造業」が15.2%と最も多く、自動車・電子部品・医薬品といった多様な製造業が雇用を支える構造となっています。
製造業比率が高い佐賀県では、工場のライン作業や交代制勤務に伴う身体的・心理的負荷、自動車・半導体という変動の大きい市況に左右される雇用の不安定感などが、メンタルヘルス上の留意点として挙げられます。
佐賀県で活用できる公的相談窓口
| 窓口名 | 主な相談内容 | 連絡先 |
|---|---|---|
| 佐賀産業保健総合支援センター | メンタルヘルス対策支援、ストレスチェック制度相談、研修会 | TEL:0952-41-1888(佐賀市駅南本町) |
| 佐賀労働局 総合労働相談コーナー | ハラスメント相談、労働条件全般の相談 | 佐賀労働局ホームページより確認 |
| 佐賀県内の地域産業保健センター | 50人未満の事業場向け健康相談・メンタルヘルス相談 | 佐賀産業保健総合支援センターホームページより確認 |
| 佐賀県精神保健福祉センター | 心の健康に関する相談 | 佐賀県ホームページより確認 |
佐賀産業保健総合支援センターは佐賀市駅南本町に所在し、産業医学・労働衛生工学・メンタルヘルス・カウンセリングなど各分野の専門家を配置しています。窓口・電話・メールでの相談に加え、工場など現地への相談員訪問も可能で、ライン作業に伴う健康課題やメンタルヘルスの進め方について具体的な助言を受けられます。
県内4地区に設置された地域産業保健センターでは、労働者数50人未満の中小規模事業場を対象に、健康相談・個別訪問指導等を無料で提供しています。自動車・電子部品関連の中小サプライヤーが多い佐賀県において、こうした地域窓口の活用は、2028年のストレスチェック義務化に向けた準備としても有効です。
10. (一社)日本産業カウンセラー協会九州支部のサービス紹介

一般社団法人日本産業カウンセラー協会九州支部は、福岡・佐賀・長崎・大分・熊本・宮崎・鹿児島の7県からなる、九州全域をカバーする約2,500名の会員を持つ専門家団体です。産業カウンセラーやキャリアコンサルタントをはじめとする会員が、メンタルヘルス対策への支援、キャリア形成への支援、職場における人間関係開発・職場環境改善への支援という3つの活動領域に取り組んでいます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | 一般社団法人日本産業カウンセラー協会 |
| 設立 | 1960年11月 社団法人設立認可 1970年4月(労働大臣設立許可) |
| 会員数(個人) | 31,862人(2025年3月末現在) |
| 賛助会員数(団体) | 350社(2025年3月末現在) |
| 九州支部 会員数 | 2,520名(拠点:福岡県福岡市博多区博多駅南1丁目2番地15号) |
主なサービス内容は以下のとおりです。
- 産業カウンセラー養成講座・キャリアコンサルタント養成講習の運営
- 企業・団体向けの講演会・研修会の開催(メンタルヘルス対策、ハラスメント防止研修など)
- 個人・法人向けのカウンセリングや、ハラスメント相談窓口の提供
- 社内のメンタルヘルス体制の構築に向けたコンサルティング
九州各県に根を張った活動実績を持つ専門家団体として、九州内企業のメンタルヘルス対策・ハラスメント対策・ストレスチェック義務化への対応を、地域の実情に即して支援しています。
また、ストレスチェック制度との関連では、当協会が認定する「JAICOストレスチェックアドバイザー®」が、高ストレス者の選定における補足的面談や、結果通知後の相談対応、集団分析結果を活用した職場環境改善の提案など、企業の義務履行と実効性のある職場改善を専門的知見から支援します。
11. よくある質問(Q&A)

Q1. ストレスチェックの義務化は、なぜ50人未満の事業場にも拡大されるのですか?
A. 厚生労働省の調査で、50人以上の事業場の実施率が81.7%であるのに対し、50人未満の事業場では34.6%にとどまるという大きな格差が確認されたためです。メンタルヘルス対策の格差を解消し、すべての労働者が等しく予防的な支援を受けられる体制を整えることを目的に、2028年4月からの義務化が決定しました。
Q2. 50人未満の事業場が今から準備すべきことは何ですか?
A. まずは産業保健総合支援センターや地域産業保健センターといった公的窓口に相談し、自社の状況を把握することが第一歩です。実施体制(誰が実施事務に当たるか、人事権を持つ者を関与させない体制づくりなど)の整備や、外部の専門家の活用を検討することをおすすめします。
Q3. ハラスメント被害を受けた場合、どこに相談すればよいですか?
A. 各都道府県労働局に設置されている「総合労働相談コーナー」が、パワーハラスメント・セクシュアルハラスメント・マタニティハラスメントなど、ハラスメント全般の相談窓口です。面談・電話どちらでも対応しており、無料で利用できます。社内の相談窓口に相談しづらい場合の選択肢として活用できます。
Q4. 精神障害の労災認定が増えているのはなぜですか?
A. 厚生労働省の令和6年度「過労死等の労災補償状況」によると、精神障害に関する労災請求件数は3,780件、支給決定件数は1,055件で、いずれも過去最多を更新し、支給決定件数は6年連続で増加しています。支給決定の原因事象では「パワーハラスメントを受けた」が224件と最多であり、ハラスメントが労災認定の主要因であることが続いています。労災認定基準の周知が進んだことに加え、ハラスメントへの社会的な問題意識の高まりが、相談・申請件数の増加につながっていると考えられます。
Q5. (一社)日本産業カウンセラー協会は九州各県に研修・相談に来てもらえますか?
A. はい、対応しています。九州支部は九州7県全域に会員ネットワークを持ち、訪問カウンセリング・出張研修にも対応しています。オンライン形式にも対応しておりますので、まずはお気軽にご相談ください。
TEL:092-434-4433(平日 9:00〜17:00)
12. 関連資料のダウンロード
ハラスメント対策やストレスチェック対策の進め方について、より詳しい資料をご用意しています。ぜひあわせてご活用ください。
13. まとめ

メンタルヘルス不調は、企業に年間7.6兆円規模の経済的損失をもたらす経営課題であり、2028年4月からはストレスチェックが50人未満の事業場にも義務化されます。また、2026年10月からはカスタマーハラスメント対策や、求職者等に対するセクシュアルハラスメント対策が義務化されるなど、ハラスメント対策の強化が厚生労働省から発表されています。
九州7県はそれぞれ異なる産業構造を持ち、半導体・重化学工業・農畜産業・造船業など業種特有のメンタルヘルス課題が存在します。各県の産業保健総合支援センターや労働局の総合労働相談コーナーといった公的窓口を起点に、自社の状況に合った対策を早期に進めることが重要です。一般社団法人日本産業カウンセラー協会九州支部では、九州各地に根づいた知見をもとに、ストレスチェックの実施支援からハラスメント対策研修まで一貫したサポートを提供しています。お気軽にご相談ください。
参考文献・出典
- 厚生労働省「令和6年労働安全衛生調査(実態調査)結果の概要」
- 厚生労働省「令和6年度『過労死等の労災補償状況』」
- 厚生労働省「ストレスチェック制度などのメンタルヘルス対策に関する検討会」資料
- 厚生労働省「第14次労働災害防止計画(2023年~2028年)」
- 厚生労働省 こころの耳「産業保健総合支援センター(さんぽセンター)」「地域産業保健センター(地さんぽ)」
- 横浜市立大学・産業医科大学「メンタル不調の影響、年間7.6兆円の生産性損失に」(2025年)
- 独立行政法人労働者健康安全機構 各県産業保健総合支援センター公式サイト
- 経済産業省「経済構造実態調査(製造業)」
- 各都道府県庁公式サイト(産業統計・県民経済計算等)
※本記事は2026年6月時点の情報をもとに作成しています。法令等は変更になる場合があります。最新情報は各公的機関の公式サイトをご確認ください。
この記事の執筆者

鈴木 勇太(すずきゆうた)
1988年生まれ。福岡医療福祉大学人間社会福祉学部臨床医療福祉学科卒業。2010年に産業カウンセラー、2015年にキャリアコンサルタント取得。一般社団法人日本産業カウンセラー協会広報・広告部長。
https://kyushu.counselor.or.jp/member_suzuki/
この記事の監修者

木村 潤(きむらじゅん)
1960年生まれ。宮崎大学大学院工学研究科工業化学専攻修了。一般社団法人日本産業カウンセラー協会九州支部支部長。
https://kyushu.counselor.or.jp/about/about02/
